03 CHALLENGE

自然災害による被害低減のための土木事業

古紙は「植物由来の繊維」です。対象地盤に添加すると土の粒子に絡みつき、周辺にある水分を吸収するという特徴があります。また、明和製紙原料の研究で、地盤に添加された古紙が微生物の居場所となり、微生物の活性に貢献する特徴があることもわかってきました。このような古紙の特徴を生かし、自然災害による被害低減のための地盤固化技術について、当社は日々研究しています。

MICP(Microbially Induced Carbonate Precipitation) × WP(Wasted Paper)

通常、土の中には多くの微生物が含まれます。地盤中の微生物は、使い方次第で人々の生活を豊かにする有用な地下資源の1つと考えられています。近年では、微生物機能を利用した新しい地盤改良技術が注目されており、その研究開発が非常に活性化しています。

微生物を用いた地盤改良技術としては、地盤の強度を向上させる手法が提案されており、微生物を用いて炭酸カルシウムを析出することで地盤を固化させる最も有力な方法としてMICP(Microbially Induced Carbonate Precipitation)が注目されています。

微生物を活用した地盤改良技術には、製造時にCO2を多く排出しない地盤改良材を用いることができると期待される点 や、コストの低減、小さな目詰まりで大きな強度が得られるなどの利点があります。このMICPという手法に古紙を加えることで、古紙が土の粒子に絡みついて水分を吸収し、微生物の居場所になり、微生物を活用した地盤改良技術の選択肢を増やすことができると考えています。
明和製紙原料は、従来解決できていなかった地盤改良技術の課題を解決するために、研究開発を進めています。

液状化現象抑制

全国各地における地震の頻発化に伴い、地盤の液状化が大きな社会問題となっています。特に東北地方太平洋沖地震では、震源に近い東北地方だけでなく、千葉県などの関東地方の沿岸部でも液状化が多発しました。

明和製紙原料は、液状化現象抑制のために、「MICP×WP」というこれまでにない技術開発に取り組んでいます。古紙に含まれるセルロース繊維が土粒子間に張り巡らされ、セルロース繊維に定着した微生物の代謝によって、セルロース繊維上に炭酸カルシウムが生成されます。その炭酸カルシウムが土砂の粒子をつなぎ合わせ、対象土壌を強化する作用と、古紙が水分を吸収することで、液状化現象を抑制します。

古紙の材料であるセルロース、添加する微生物は、いずれも自然界に存在するものです。そのため、対象土壌を汚染することはないと考えています。明和製紙原料は、少ない環境負荷で液状化現象を軽減する技術を高めることをめざします。

共同研究先

琉球大学
地盤環境工学研究室

松原 仁准教授


泥炭性軟弱地盤の改良

北海道の平野部には、広大な泥炭性軟弱地盤が分布しています。泥炭性軟弱地盤には、二次圧密が大きく地盤の沈下を引き起こしやすいという問題や、低い支持力のために生じるすべり破壊などの問題があり、構造物を建設する際に、設計・施工段階で多くの課題があると言われています。また、掘削によって採取した泥炭は、高含水比で低強度な土であるため、そのままでは盛土材料として使用することはできません。捨土処分するにしても、コスト面や環境面から課題が多く残されています。

一方、東南アジアにおいても、広大な泥炭性軟弱地盤が分布しています。ここでも、泥炭性軟弱地盤上に農道を建設する際に、低コストで高強度となる手段が必要だと考えています。

泥炭地で採取した泥炭をMICP×WPで固化し、その固化した土を盛土として活用することができれば、泥炭処分コストを削減するだけでなく、軟弱地盤の改良も同時に実現することができるでしょう。明和製紙原料は、資源の無駄を減らし、泥炭性軟弱地盤を改良するために、技術の開発を進めています。

共同研究先

北海道大学 大学院工学研究院
環境循環システム部門
地圏循環工学分野 資源生物工学研究室

川﨑 了教授

今後の挑戦

食糧不足に対応するために、古紙を活用した土づくりへの挑戦

地球には植物が育ちやすい肥沃な土地と、植物が育ちにくい土地があります。ほんの少しの土でも、できるまでに膨大な年月がかかると言われていますが、近年その肥沃な土地が失われつつあります。世界の人口が増加する中で、人の食を守るには、肥沃でない土地の農産物の生産性を高めていくことが大きな課題になっています。明和製紙原料は、古紙を活用した土壌改良によって、食糧生産の可能な土地を増やし、農産物の生産性を高めるために、研究を推進しています。

古紙以外の資源を活用する社会課題解決事業への挑戦

現在、明和製紙原料では「古紙は、植物由来の繊維である」という特徴を生かして新規事業を検討しています。「植物由来の繊維」を含む素材で、社会で無価値とみなされているものは、たくさんあります。しかし、これらの素材を「植物由来の繊維」として捉えると、実は、古紙と同じ成果を生み出すことができると信じています。古紙で培ったノウハウを活用し、価値がないとみなされている「植物由来の繊維」を、新たに資源として活用する事業も検討しています。そのような事業が立ち上がれば、人は、その無価値なものにも重要性を見出し、その資源を大切にするという生活様式を身に付けられるはずです。

もっと地球を大切にするという文化をつくり出すために、明和製紙原料は、これからも行動し続けていきます。